大腸の主な検査方法:メリット・デメリットを紹介
目次
大腸の病気を見つける検査方法には、いくつか種類があります。 それぞれ違った特徴をもっており、メリット・デメリットもさまざまです。 この記事では、健康診断から、がん検診、精密検査まで、大腸の検査として一般的に実施されている検査を5つ紹介します。 それぞれの検査について、簡単な手順とメリット・デメリットをまとめていますので、検査の概要をつかむことができます。 ぜひ参考にして、検査を受けるきっかけにしてください。
便潜血検査
便潜血検査は、便に血液が含まれているかを判断する検査です。 がんやポリープ、痔などがあると、腸内を移動する便と擦れて、便に血液が付着します。 目に見えないわずかな血液も検出が可能で、厚生労働省が定めたがん検診のガイドラインでも推奨されている検査で、健康診断の際、大腸がん検診として実施されています。
便潜血検査の手順
検査は自宅で実施できます。 精度を上げるために、二日間連続で採取する「2日法」が推奨されています。 食事の内容が結果に与える影響は少ないため、直前の食事制限などはありません。
検査手順は次のとおりです。
- 便器にトイレットペーパーを敷いて、その上に排便します。
洋式トイレの場合は、水に濡れない場所にトイレットペーパーを敷き、普段と反対向きに座り排便をします。
- 便の表面を検査キットに付属の棒でまんべんなくこすり、便を採取します。
※ヘモグロビンは室温(15-20度)では変性していくため冷暗所で保存し、便を採取してから3日以内に提出しましょう。
便潜血検査のメリット・デメリット
便潜血検査のメリット・デメリットは次の通りです。
メリット | デメリット |
死亡率の減少を示す十分な証拠がある | 大腸がんにかかっていても、必ず陽性とはならないケースもある |
便の採取だけなので、身体に負担がかからない | |
検査の費用が比較的に安価で行える |
大腸内視鏡検査
大腸内視鏡検査は、肛門から大腸の一番奥にある盲腸(もうちょう)まで、大腸のすべてを内部から観察する検査です。 大腸の粘膜を直接観察できるので、小さな病変の区別や、組織の採取もできます。
大腸内視鏡検査の手順
検査手順は次のとおりです。
- 前処置
前日から食事制限があり、当日の朝に腸管洗浄液を飲んで腸をきれいにします。
- 左側を下にした横向きの状態で、内視鏡を肛門から挿入
大腸の一番奥まで進めたのち、内視鏡をゆっくり抜きながら写真を撮っていきます。 個人差はありますが、およそ10分程度で終了です。
大腸内視鏡のメリット・デメリット
大腸内視鏡のメリット・デメリットは次のとおりです。
メリット | デメリット |
死亡率の減少を示す十分な証拠がある | 肛門から内視鏡を挿入する行為に、精神的な負担を感じる |
大腸の粘膜を直接観察できるので、小さな病変も観察できる | 内視鏡の挿入による痛みを感じる場合がある |
検査をしながら、ポリープなどの切除や病変組織の採取もできる | 大腸狭窄でファイバーが入らない場合は、検査ができない |
大腸CT検査
大腸CT検査は、3次元画像処理を行い、大腸内視鏡検査と類似した画像を作成する検査です。 大腸がんやポリープ、大腸憩室(けいしつ)などの診断が可能です。 血管や骨などの画像を重ねることもでき、手術前のシミュレーション検査としても利用されています。
大腸CT検査の手順
検査手順は次のとおりです。
- 前処置
下剤とともに少量のバリウムなどの造影剤を服用します。 造影剤が便に混ざり、ポリープとの鑑別に役立ちます。
- 肛門から細いチューブを挿入して、炭酸ガスを注入して大腸を膨らませます。
仰向けと腹ばいの2つの体位でそれぞれ撮影します。
- 撮影終了後、炭酸ガスを脱気して終了になります。
検査時間は、入室から終了まで15分程度です。
大腸CT検査のメリット・デメリット
大腸CT検査のメリット・デメリットは次のとおりです。
メリット | デメリット |
注入するのは炭酸ガスなため、痛みがほぼない | ポリープなどの病変切除や組織の採取ができない |
合併症がほとんどない | 平坦な病変の検出が難しい場合がある |
大腸の狭窄などで、物理的に内視鏡検査が困難な方にも実施できる | 放射線被ばくがある |
大腸の形状が立体的にわかる | |
検査時間が短い(個人差はある) |
大腸X線バリウム検査
大腸X線バリウム検査は、肛門に挿入したチューブからバリウムと空気を注入し、体位を変えながらX線撮影をする検査です。 大腸狭窄により内視鏡ができない場合でも検査ができ、痛みもほとんどありません。
大腸X線バリウム検査の手順
検査手順は次のとおりです。
- 前処置
前日より検査食と食事制限があります。 下剤を服用して大腸内をきれいにします。
- 肛門にチューブを挿入し、バリウム(約200cc)と空気を注入します。
体位変換しながらバリウムを大腸の奥まで進めて行きます。
- 10〜30枚程度、体位を変えながらX線撮影をします。
大腸X線バリウム検査のメリット・デメリット
大腸X線バリウム検査のメリット・デメリットは次のとおりです。
メリット | デメリット |
注入物がバリウムと空気のため、痛みがほとんど無い | ポリープなどの病変切除や組織の採取ができない |
腹部全体が写るので、病変部位の特定ができる | 平坦な病変の検出が難しい場合がある |
大腸狭窄などで、内視鏡のファイバーが通らない場合にも検査ができる | 放射線被ばくがある |
大腸カプセル内視鏡検査
一般的なカプセルの薬と同じ形でできている内視鏡です。 水と一緒に飲み込み、腸管の内部を進みながら自動で写真を撮影していきます。 身体に貼り付けたセンサーを経由し、肩から下げた記録装置に画像が送られます。 検査時間は個人差があり、3〜10時間(平均5時間)必要です。
大腸カプセル内視鏡検査の手順
検査手順は次のとおりです。
- 前処置
大腸内視鏡検査と同じく、事前に下剤を服用し、大腸をきれいにします。
- センサーを胸、腹、おしりに数箇所貼り付けます。
記録装置が入ったバッグを肩から下げて準備完了です。
- カプセル状の小型カメラを水と一緒に飲み込みます。
カプセルを飲んだあとも排出をうながすために、追加の下剤を飲みます。
- 検査の開始2時間後に水、4時間後からは食事ができます。
- カプセルの排出の確認もしくは約8〜10時間経過すると検査は終了します。
大腸カプセル内視鏡検査のメリット・デメリット
大腸カプセル内視鏡検査のメリット・デメリットは次のとおりです。
メリット | デメリット |
カプセルを飲むだけなので、「怖さ」「恥ずかしさ」などの負担がほとんどない | ポリープなどの病変切除や組織の採取ができない |
放射線の被ばくがない (カプセルの排出が確認できない場合は、腹部X線検査で確認します) | 検査中も下剤を飲む必要がある |
大腸内視鏡検査ができない場合でも、検査が受けられる。 (大腸狭窄がある場合はできません) | 検査時間が3〜10時間(個人差が大きい)かかる |
まとめ
紹介した5つの検査を簡単にまとめました。
便潜血検査 | 大腸内視鏡検査 | 大腸CT検査 | 大腸X線バリウム検査 | 大腸カプセル内視鏡検査 | |
概要 | 2日間の便を採取 | 肛門から内視鏡を挿入 | 肛門から炭酸ガスを注入し撮影 | 肛門からバリウムと空気を挿入し撮影 | カプセル型のカメラを内服 |
前処置 | 不要 | 食事制限 下剤の服用 | 食事制限 下剤の服用 | 食事制限 下剤の服用 | 食事制限 下剤の服用 |
おもな特徴 | 検査が簡便で苦痛がない | 組織検査やポリープを切除できる | 短時間で終わり、大腸の形状が立体的にわかる | 腹部全体が写るので、病変部位の特定ができる | カプセルを飲むだけなので、苦痛がない |
詳細は各項目に戻って確認してください。 それぞれの検査の特徴を理解し、早期発見・早期治療を心がけましょう。 検査に対する不安が少しでも和らいで、受診するきっかけになったら幸いです。
監修
医療法人社団晃輝会
理事長 医学博士 大堀 晃裕
日本大腸肛門病学会 専門医・指導医 https://www.coloproctology.gr.jp/
大学病院と総合病院に長年従事し、肛門病疾患を中心に大腸肛門病に対して多数の検査実績、手術への豊富な執刀経験を持ちます。
日本大腸肛門病学会の中でも数少ない専門医・指導医として、治療だけでなく技術指導を行なっています。
現在医療法人社団晃輝会の理事長として大腸肛門病・消化器内科の専門クリニックを2院展開し、胃・大腸内視鏡検査を年間2,700件以上、手術も年間500件あまり手掛けています。
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