内痔核・裂肛・痔瘻の手術の方法等を紹介
目次
手術と聞くと、入院が必要で大がかりなイメージがあると思います。また痔の手術の場合、内容がわからなくて不安に思う方もいるかもしれません。
しかし今は、手術方法の進歩により、なるべく傷が小さく出血が少ない方法が確立されてきています。
この記事は、痔の手術に不安を持っている方のために、手術の方法について解説します。
痔の治療で悩んでいる方は、参考にしてください。
痔の手術の流れ
- 手術前の準備
- 手術~麻酔
それぞれ解説します。
手術前の準備
手術時に直腸がきれいになるように、手術前に準備が必要です。
食事は、手術開始時間の6時間前までに済ませる必要がありますが、水、お茶、スポーツドリンクなど、水分の制限はありません。
手術2時間前に、坐剤を使用し、排便を促します。
手術~麻酔
日帰り手術と入院で行う手術で大きく違うのは、麻酔の方法です。
麻酔方法が違うのは、自宅へ帰る必要があるからです。
手術中はしっかりと麻酔が効く腰椎麻酔で行っております。
内痔核(いぼ痔)の手術方法
内痔核(いぼ痔)の手術方法は、おもに以下の2つです。
- ALTA注射療法
- 結紮切除法
それぞれ解説します。
ALTA注射療法
ALTA注射療法は、内痔核(いぼ痔)を切らずに注射をして治療する方法です。
ALTA(硫酸アルミニウムカリウムタンニン酸注射液)という薬剤を患部に注射し、痔核を硬化縮小させます。
注射療法のため、従来の切除手術に比べ、痛みや術後出血の心配もなく、生活制限もほとんどありません。
再発率がわずかにあることや持病がある方は施術できないなど、条件はいくつかありますが、体にやさしく負担が小さい治療法です。
切除術とALTA注射療法を組み合わせて、切除範囲を小さくさせることにも使用されています。
結紮切除法
結紮(けっさつ)切除法は、内痔核の手術として一般的な方法です。
痔核を切除する手術ですが、出血を予防するため、痔核切除後の根部(根元)を糸で結びます。直接切除しますので、痔を完全に治療できます。手術時間はおよそ10~15分です。
裂肛(切れ痔)の手術方法
裂肛(切れ痔)は、軟膏(なんこう)の処方や生活習慣や排便の指導で改善することも多いので、できるだけ早めに受診することをおすすめします。症状が軽いほど、治療が楽になります。
手術が適応になるのは、傷が深く潰瘍化したり、傷のために肛門がかなり狭くなったりした場合です。
裂肛(切れ痔)の手術方法は、おもに以下の2つです。
- 肛門狭窄形成術
- 側方内括約筋切開術
それぞれ解説します。
肛門狭窄形成術
裂肛を繰り返し慢性化した結果、肛門が狭くなった症状に対する治療法です。
肛門を閉じる働きをする肛門括約筋の一部を切開し、狭窄を改善します。
裂肛のためにできた、潰瘍(かいよう)やポリープなども同時に切除できます。
切除した部分は形成術を行い終了です。
側方内括約筋切開術
裂肛の原因の一つに、肛門括約筋の過度の緊張があげられます。
この手術は、肛門括約筋の一部を切除して、緊張を緩和する治療法です。
裂肛には、ポリープやスキンタグ(皮膚のたるみ)などがあることが多いため、一緒に切除します。
痔ろう(痔瘻・あな痔)の手術方法
痔ろうは、あな痔とも呼ばれ、直腸の内側に穴(瘻管:ろうかん)ができる疾患です。細菌に感染して炎症が起こることによってできるもので、穴(瘻管)の中に膿(うみ)が溜まります。その穴が肛門周辺の皮膚まで到達し、そこから膿が排出される痔ろうが最も多いケースです。
治療には原因となる穴(瘻管)を切除する手術をします。
痔ろう(あな痔)の手術方法は、以下の3つです。
- 切開開放術
- 瘻管くりぬき術
- シートン法
それぞれ解説します。
切開開放術
穴(瘻管)が肛門の後ろ側にある場合に行う手術法です。
穴(瘻管)を切除し、開放創(傷を開いたまま)にします。
肛門括約筋の切開する範囲も大きいのですが、確実に治る可能性が高くなる術式です。
膿がたまる場所が大きい坐骨直腸窩痔ろう(体の背骨側にある直腸のくぼみ)の場合でも、穴(瘻管)の走行が単純な場合は、この手術方法を採用します。
瘻管くりぬき術
できるだけ肛門括約筋の損傷を小さくするために、穴(瘻管)をくり抜くように行う手術になります。
穴(瘻管)のできた場所が側方、もしくは前方の場合には、大きく切開することができません。手術の傷によって引きつれをおこし、肛門の機能を損なうおそれがあるからです。
この手術方法は、肛門括約筋の損傷は小さくできます。再発する場合がまれにあります。
監修
医療法人社団晃輝会
理事長 医学博士 大堀 晃裕
日本大腸肛門病学会 専門医・指導医 https://www.coloproctology.gr.jp/
大学病院と総合病院に長年従事し、肛門病疾患を中心に大腸肛門病に対して多数の検査実績、手術への豊富な執刀経験を持ちます。
日本大腸肛門病学会の中でも数少ない専門医・指導医として、治療だけでなく技術指導を行なっています。
現在医療法人社団晃輝会の理事長として大腸肛門病・消化器内科の専門クリニックを2院展開し、胃・大腸内視鏡検査を年間2,700件以上、手術も年間500件あまり手掛けています。
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