痔の種類とは?それぞれの状態・症状・原因を解説
「痔」と聞いてどのような印象がありますか? 「血が出る」や「痛い」などの印象が強いのではないでしょうか。
「痔」とは、肛門の病気の総称です。 痔にはさまざまな種類があり、血も出ず、痛みも感じないものまであります。
痔になりやすい性別や年齢はとくになく、幅広い年齢の方に起こる症状です。 そのため、痔に関するトラブルで悩まれている方は大勢います。
この記事では、痔の種類やそれぞれの状態・症状・原因について解説しています。 記事を読むことで、悩みや不安な気持ちが少しでも和らげば幸いです。
痔核(いぼ痔)
痔核(いぼ痔)とは、肛門周辺にいぼ状の腫れができる状態です。 肛門周辺に負荷がかかることで、肛門粘膜のなかにある網目状の血管などが張り巡らされている静脈叢(じょうみゃくそう)がうっ血してできます。 痔核とは医学的な名称です。通称ではいぼ痔と呼ばれています。
肛門のふちから約1.5cm奥には「歯状線」と呼ばれる粘膜と皮膚の境目の部分があります。 歯状線よりお尻の皮膚に近い部分にできる痔を「外痔核(がいじかく)」、歯状線より口側の肛門内部にできる痔は「内痔核(ないじかく)」です。
外痔核
- 状態
歯状線より外側部分の静脈がうっ血してできた、いぼ状に腫れたものです。 炎症を起こし、急に腫れる血豆のような外痔核を、血栓性外痔核(けっせんせいがいじかく)といいます。
- 症状
外痔核は痛覚のある肛門の皮膚にできるため、痛みを感じます。 外側にできるため、出血は少ないです。 血栓性外痔核の場合は、強い痛みがあります。
- 原因
便秘や下痢、辛いもの、アルコールの摂り過ぎ、お尻を冷やす、長時間同じ姿勢が続く、ストレスなどがあげられます。
内痔核
- 状態
歯状線より奥の部分にあたる粘膜下の静脈がうっ血してできた、いぼ状に腫れたものです。
- 症状
排便したときの出血や便が残っている感じなどがあります。 内痔核ができる歯状線の奥にある粘膜は、大腸と同じ自律神経に支配されており、ほとんど痛みを感じません。 そのため、出血により痔であることに初めて気づくことも多いです。 症状が進むと、便器が真っ赤になるくらいの血が出ることもあります。
ほとんどの場合で痛みを感じませんが、急に腫れたり炎症を起こす場合や、排便時にいぼが肛門の外に出た場合などは、痛みがあらわれます。
- 原因
便秘による排便時の強くいきむことや、長時間同じ姿勢でいるとできやすいです。 また、出産時がきっかけでできることもあります。
裂肛(切れ痔)
- 状態
肛門の出口あたりの皮膚が、硬い便の通過や下痢便の強い勢いなどで限界以上に伸ばされ、裂けたり切れたりする状態です。この症状を急性裂肛といいます。
切れ痔はこの他に、繰り返し切れることで深い潰瘍状の傷ができる慢性裂肛、いぼ痔が脱出するときに傷ができる脱出性裂肛などがあります。
- 症状
排便時に感じる痛みと出血がおもな症状になります。 痛みの程度は、軽い痛みから強い痛みまでさまざまです。 排便時に感じる痛みがほとんどで、場合により排便後も痛みが続くこともあります。 肛門にある括約筋(かつやくきん)がけいれんしたり硬くなったりすることが原因で肛門狭窄が起きると、強い痛みを感じます。
出血はあざやかな赤い色で、出血量もトイレットペーパーや便につくくらいで少ないです。
- 原因
便秘が原因で、硬い便を無理に出そうとする刺激で症状があらわれます。 他にも、くり返す下痢による炎症でできることもあります。 また、いぼ痔やポリープが引っ張られてできる傷や、クローン病などの全身性疾患の症状としてできることもあります。
痔瘻(あな痔)
- 状態
痔瘻(あな痔)は、直腸と肛門周囲の皮膚との間にトンネルができる状態です。 歯状線のくぼみに便が入り、周囲が細菌に感染し化膿することを、肛門周囲膿瘍と呼びます。 くり返すことで膿の通り道ができあがり、あな痔が完成します。
- 症状
肛門周囲膿瘍が発症すると、膿が出たり発熱したりして痛みを感じます。 化膿していないときに痛みはありません。 しこりが触れたり、分泌物が出たり、かゆみを感じたりするのがおもな症状です。
- 原因
あな痔になる前段階である肛門周囲膿瘍は、歯状線にある肛門陰窩と呼ばれるくぼみに下痢便などが入り込み、化膿することで発症します。 肛門周囲膿瘍が進行し、慢性化することがあな痔のおもな原因です。 その他に、切れ痔から生じる場合や、クローン病との合併で発症する場合などもあります。
監修
医療法人社団晃輝会
理事長 医学博士 大堀 晃裕
日本大腸肛門病学会 専門医・指導医 https://www.coloproctology.gr.jp/
大学病院と総合病院に長年従事し、肛門病疾患を中心に大腸肛門病に対して多数の検査実績、手術への豊富な執刀経験を持ちます。
日本大腸肛門病学会の中でも数少ない専門医・指導医として、治療だけでなく技術指導を行なっています。
現在医療法人社団晃輝会の理事長として大腸肛門病・消化器内科の専門クリニックを2院展開し、胃・大腸内視鏡検査を年間2,700件以上、手術も年間500件あまり手掛けています。
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