切れ痔を放置するとどうなる?自分でできる対処法や病院で行う治療法等を解説
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便秘などで便が固いときに、切れ痔になることはありませんか。 痛みや出血で、どうしたら良いか困ることもあると思います。 でも病院に行くのはなんだか恥ずかしいし、時間もないし、自分で治せるのが1番良いですよね。
そこでこの記事では、切れ痔になったときに病院へ行かず、放置したらどうなるかを解説しています。 また、自分でできる対処法や病院で行う治療法も紹介していますので、痔に対する不安な気持ちをお持ちの方は、ぜひ参考にしてください。 少しでも不安な気持ちが和らげれば良いなと思っています。
切れ痔を放置するとどうなる?
切れ痔(裂孔:れっこう)の多くは、硬い便をするときにできる「急性裂肛(きゅうせいれっこう)」と言われています。 排便中に痛みを感じ、排便後もしばらくの間、痛みが続くこともあります。 出血の色はあざやかな赤い色で、出血量もトイレットペーパーや便につくくらいで少ないです。 急性裂肛の場合の一般的な治療は、食事や生活習慣の改善、便通のコントロールになります。 これらの治療により、4〜5日で症状は良くなることが多いです。
外科的な治療が必要になるのは約1割程度と言われています。
切れ痔は急性裂肛の他に、以下のように分類されます。
急性裂肛 | 硬い便により肛門の皮ふが限界以上に伸ばされ裂けてしまう傷のこと |
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慢性裂肛 | 潰瘍(かいよう)状の深い傷ができる。ポリープやイボができることもある |
脱出性裂肛 | 痔核(いぼ痔)や肛門ポリープがくりかえし脱出するとき、肛門の皮膚が引っ張られてできる傷のこと |
症候性裂肛 | クローン病などの全身性疾患の部分症状として、肛門に切れ痔ができること |
自分でできる切れ痔の対処法
硬い便によりできた切れ痔(急性裂肛)の場合は、ほとんどのケースで自然治癒できるため、自分で対処ができます。 症状に良い対処法を3つ紹介します。
- 肛門周囲を清潔に保つ
- 下痢・便秘を起こさないようにする
- 患部周辺を温める
それぞれ解説します。
対処法①肛門周囲を清潔に保つ
肛門の周囲が不衛生な状態のままでいると、切れ痔の傷から菌が入り、感染を起こす原因となります。 傷の感染から、肛門周囲膿瘍(こうもんしゅういのうよう)や浸出液(しんしゅつえき)による皮膚炎になる場合があります。 そのため、肛門周囲は清潔に保ちましょう。
※温水洗浄便座やウェットティッシュなどで過度に洗浄することは、肛門を乾燥させ、切れ痔の原因となりますので注意が必要です。洗浄は10~15秒程度にしましょう。
対処法②下痢・便秘を起こさないようにする
下痢や便秘は切れ痔を引き起こしたり、悪化させる原因となります。
まずは便秘にならないよう、規則正しい生活を心がけ、排便習慣を身につけましょう。 規則正しい食事と適度な運動により、胃や腸を刺激され、排便反射が促されます。 また、便が柔らかくなるように、水分をしっかりとってください。
下痢になりにくい腸にするには、適度な運動や十分な睡眠をとり、ストレスを溜めないようにしてください。 暴飲暴食を避け、とくに冷たい飲み物、アルコール類を飲みすぎないように気をつけましょう。 乳酸菌などの善玉菌を腸内で増やせるように、ヨーグルトや乳酸菌飲料、納豆などを摂取しつつ、バランスの良い食事を摂るようにしてください。
対処法③患部周辺を温める
患部周辺を温め血流が良くなると、痛みをやわらげたり、傷が治るのにつながります。 お湯にゆっくり浸かる、カイロや温座パッドなどを利用して、患部を温めましょう。とくに入浴時に温まることは、患部を清潔にする効果もありますのでおすすめです。
自分では治せない切れ痔の種類
切れ痔の場合でも、次に紹介する2つの症状があるときは、自然治癒が困難です。 様子を見ずに病院を受診してください。
治せない①脱出性裂肛
脱出性裂肛は、痔核(いぼ痔)や肛門ポリープがくりかえし脱出するときに肛門の皮膚が引っ張られてできる切れ痔です。 脱出時に痛みと少量の出血があります。 脱出はくり返しおきますので、早めの受診が必要です。
治せない②症候性裂肛
症候性裂肛は、クローン病などの全身性疾患の部分症状として、肛門に切れ痔ができることです。 全身性疾患の治療がおもになります。
※全身性疾患:全身の臓器など症状があらわれる病気
慢性の切れ痔を放置すると起こるリスク
慢性の切れ痔をそのままにしておくと起こる代表的なリスクは次の3つです。 原因をそれぞれ解説します。
リスク①肛門ポリープができる
肛門ポリープは、肛門の皮膚と粘膜の境目のあたりにできるポリープのことです。 ポリープはくり返し刺激を受けるとできると考えられています。 切れ痔をくり返すと、ポリープができやすくなり、注意が必要です。
またポリープが大きくなると、排便時に肛門の外へ飛び出すようになります。 排便のたびに脱出をくり返すことは、ポリープの根元部分が裂ける原因となり、痛みや出血を起こします。
この刺激でポリープができやすくなり、悪循環になりかねないため、早めの治療を心がけましょう。
リスク②潰瘍ができる
慢性的な切れ痔は傷の周りが硬くなり、切れやすく治りにくい状態です。 悪化すると潰瘍(かいよう:深い傷)に進展し、傷が治る時に引き連れるように治ります。 これをくり返すと、肛門が狭くなり排便をしにくくなるリスクが発生します。
切れ痔をくり返す場合は、慢性化する前に受診してみましょう。
リスク③肛門皮垂
肛門皮垂は、肛門周囲の皮膚にたるみができることです。切れ痔やいぼ痔などで肛門が腫れ、治った傷跡の皮膚がたるんで残った状態です。切れ痔が慢性化したときや、女性の場合は出産時にできることもあります。 皮膚のたるみのため、放置しても問題ありません。しかし場合によっては肛門を清潔に保つことが難しくなり、かゆみや炎症、肛門周囲膿瘍を起こすこともあるため、注意が必要です。
※肛門周囲膿瘍:肛門の周囲に膿がたまること
病院を受診した方がいい切れ痔の症状
次の症状がある切れ痔には、病院を受診して、適切な治療を受けてください。
- かゆみがある
- 切れ痔をくり返す
- 便が出にくい
- 数か月治らない
上記のような症状は、他の病気が隠れている可能性もあります。 早期発見・早期治療につなげるためにも、早めの受診を心がけてください。
病院で行う切れ痔の治療法
病院で行う、切れ痔の薬物療法と外科療法を紹介いたします。 外科療法が必要な場合は約1割と言われており、ほとんどの場合、痛みの少ない薬物療法で済みます。 何をするのか不安で病院へ行けない方は、参考にしてください。
治療法①薬物療法
痔の疾患用の局所麻酔薬が入った塗り薬、ステロイドが入った塗り薬を用いて治療します。 症状により、炎症を抑える薬や痛み止めの薬などの飲み薬を処方します。
治療法②外科的治療
外科治療の目的は、強く緊張している肛門内側の筋肉をゆるめ、肛門周囲への血流を増加させることです。 それぞれの原因に合わせた治療方法を紹介いたします。
機能的狭窄
機能的狭窄の場合は、指を使った肛門拡張術が行われます。 局所麻酔をしたあとに、指で肛門を広げ、緊張を緩める処置を行う方法です。
※機能的狭窄:機能の働きが強く出過ぎた場合によって起こる狭窄
器質的狭窄
器質的狭窄の場合は、切開や切除を行い、狭窄を改善させる処置を行います。 以下2つの手術を紹介します。
- 側方内括約筋切開術(LSIS)
肛門を広げることを目的に、側方の内括約筋の一部を切開し、強くなった肛門括約筋の緊張を和らげる手術。 イボやポリープ、深い潰瘍(かいよう)がない条件で行われる簡便な方法です。
- 肛門皮膚弁移動術(SSG)
切れ痔が起きている部分の組織やポリープ、イボを切除し、肛門外側の皮膚の一部を切除部分に移動させる手術。 狭窄の原因を取り除くことで狭窄を改善させ、失った部分に皮膚を移動させて補強し、再発を予防する方法です。
監修
医療法人社団晃輝会
理事長 医学博士 大堀 晃裕
日本大腸肛門病学会 専門医・指導医 https://www.coloproctology.gr.jp/
大学病院と総合病院に長年従事し、肛門病疾患を中心に大腸肛門病に対して多数の検査実績、手術への豊富な執刀経験を持ちます。
日本大腸肛門病学会の中でも数少ない専門医・指導医として、治療だけでなく技術指導を行なっています。
現在医療法人社団晃輝会の理事長として大腸肛門病・消化器内科の専門クリニックを2院展開し、胃・大腸内視鏡検査を年間2,700件以上、手術も年間500件あまり手掛けています。
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