いぼ痔(痔核)は自然治癒する?症状や効果のある市販薬等を解説
目次
いぼ痔は比較的多くの方がかかる疾患になります。 ですが、病院へ行って治療するのは恥ずかしいと感じる方も少なくありません。 放置して自然治癒してくれるのが一番だと思います。
そこでこの記事では、自然治癒しないまでも、市販薬を使用して自分で治療できる方法と病院へ行くべきいぼ痔の症状について解説しています。
また、気になる病院での治療法についても解説していますので、ぜひ参考にしてください。
いぼ痔の症状
いぼ痔とは、肛門にいぼ状の腫れができる状態です。
便秘などにより排便時に強くいきむことで、肛門部分に負荷がかかり、血液がうっ血して腫れ上がることが原因になります。
肛門の皮膚と直腸粘膜の境目の部分を「歯状線(しじょうせん)」と呼びます。 歯状線より奥にできるのが「内痔核(ないじかく)」、外側もしくは肛門の外にできるのが「外痔核(がいじかく)」です。 それぞれできる場所が違うため、症状も異なります。
内痔核
内痔核(ないじかく)は歯状線より奥の部位にできた「いぼ痔」です。 肛門の出口から約2cmほど奥の場所になります。 内痔核ができる原因はいくつかあり、排便時に強くいきむことや、長時間座っていること、出産時のいきみによってもできてしまいます。
歯状線より奥の部分は知覚神経(痛いと感じる感覚)がないため、普段はなかなか気づきません。排便時の出血や、大きくなったいぼが肛門から飛び出ることで、初めて気づく場合も多いようです。出血量はトイレットペーパーに付く程度から、便器が赤くなるほど出ることもあります。
外痔核
外痔核(がいじかく)は歯状線より外側にできた「いぼ痔」です。 外痔核ができる原因は、便秘や下痢、辛いものやアルコールの摂り過ぎ、長時間の排便時間、おしりを冷やすことなどがあります。
肛門外側は皮膚のため、知覚神経が通っていて、ほとんどの場合痛みを感じます。外側にできることもあり、排便時の出血量は少ないです。急に腫れる外痔核を血栓性外痔核(けっせんせいがいじかく)といい、強い痛みを感じます。
外痔核の市販薬治療
外痔核は肛門の外側にできるいぼ痔のため、市販薬を購入して自分で治療することもできます。
市販薬には座薬タイプと軟膏タイプがありますが、軟膏タイプのものを選んでください。痛みが出たときは薬を塗り、肛門に負荷をかけないように過ごし、痛みをやわらげましょう。症状が強い場合や痛みが長引く場合は、病院を受診してください。
内痔核の市販薬治療
内痔核は肛門の内側にできるいぼ痔のため、直接薬を塗ることがむずかしく、自分で治療するにはやりにくいです。市販薬を購入するときは、座薬タイプの薬を選んでください。
内痔核には、症状にあわせた治療法を選択する際に指標となる「Goligher(ゴリガー)」分類と呼ばれるものがあります。 grade II(グレード2)の症状までは、市販薬を使用して自分で治療することができます。
grade I | 排便時に肛門内で膨らむが、脱出はしない |
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grade II | 排便時に肛門外に脱出するが、排便が終わると自然にもどる |
grade Ⅲ | 排便時に脱出し、指で押し込み戻す必要がある |
grade Ⅳ | 常に肛門外に脱出し、押し込むことが不可能 |
いぼ痔に効果がある市販薬
市販薬を購入するときは自分で選ぶ必要があるため、どれが良いのか迷ってしまうこともあるかと思います。そこで、選ぶときに指標となる薬のタイプを紹介します。
外痔核の場合は、塗り薬を選択しましょう。塗り薬を選ぶ際は、ステロイド成分が入ったものを選んでください。ステロイドの成分が、いぼ痔の炎症をおさえ、出血や腫れなどをしずめてくれます。
市販の痔の治療薬に使われているステロイドは、5段階に分類されるなかで一番弱いランクのものが使用されているため、安心して使用できます。 不安な方は、店頭の薬剤師に相談し、アドバイスを受けてください。
いぼ痔を放置すると進行する可能性がある
いぼ痔は放置すると症状が進行することもあります。大きさが小さかったり、痛みがなかったりする場合は、放置してしまうこともあるかもしれません。ですが、小さいうちほど早く治りやすいので、なるべく早いうちに治療を開始してください。 とくに内痔核は大きくなりやすく、前述したGoligher(ゴリガー)分類のgradeⅢになると、自分では治療ができなくなりますので注意が必要です。
いぼ痔で病院に行く目安
いぼ痔で病院を受診した方が良い目安は次のとおりです。
内痔核の場合
排便時に脱出したいぼ痔が自然に戻らず、指で押し込む必要があるとき Goligher(ゴリガー)分類のgradeⅢ以上の場合
外痔核の場合
市販薬を使用してもなかなか改善されなかったり、痛みによる不快感が生じたりしたとき
これらの症状がみられた場合は、早めに病院を受診してください。
また、痔による出血は鮮やかな赤色です。 色が濃いときや出血を繰り返すときは、他の病気が隠れていることもありますので、痔の症状はたいしたことがなくても受診してください。
いぼ痔の診療科
痔の治療は、肛門科や肛門外科で行います。近くにない場合は、消化器外科もしくは外科を受診してください。
妊娠や出産にまつわる痔の場合は、産婦人科で一緒に治療してもらえることもあります。出産後の痔はまず3~6ヶ月は薬で様子をみましょう。
また、こどもの痔も肛門専門医を受診することをお勧めします。
いぼ痔の治療法
結紮切除法(けっさつせつじょほう)
いぼ痔の手術療法は、結紮切除法(けっさつせつじょほう)がおもに行われています。
結紮切除法は、いぼ痔を肛門の外から内へ縦方向に切り離し、根部を結紮(けっさつ)後にいぼ痔を切除する方法です。 すべてのタイプのいぼ痔に適応できる手術方法で、治療成績も高いのが特徴になります。しかし、術後の痛みや出血などの合併症が多く、入院が必要になることが欠点です。
ALTA(ジオン注射)
いぼ痔の血流を遮断させる薬液を直接注射し、いぼ痔を硬化させ、小さくさせます。
上記の結紮切除法(けっさつせつじょほう)と併用するとより効果的です。
ゴム輪結紮(けっさつ)療法
小さな輪ゴムをいぼ痔の根本にかけ、ゴムの収縮力を利用してしばります。 血流を遮断していぼ痔を死滅させる治療法のため、薬や麻酔もいらず、体への負担は少ないのが特徴です。 欠点は、隆起が小さいいぼ痔や繊維化して硬くなったいぼ痔にはゴムがかからず、適応できないことがあります。
まとめ
いぼ痔は直腸粘膜内にできる内痔核と、肛門の皮膚や外側にできる外痔核の2つに分けられます。できる場所が違うため、症状や治療法も異なります。外痔核にはステロイド成分の入った軟膏タイプ、内痔核には座薬タイプがオススメです。
病院へ行く目安は、市販薬を使用しても痛みがおさまらないとき、いぼ痔が脱出して自然に戻らないときなどです。このようなときは、自然治癒をなかなか見込めないため、病院で処置をしてもらう必要があります。
いぼ痔を病院で診察してもらうときに選ぶ診療科は、肛門専門医がよる手術ができる肛門科か消化器外科を選ぶと良いでしょう。
市販薬で治療するのも簡単で良いですが、早期治療のために病院を早めに受診することをおすすめします。
監修
医療法人社団晃輝会
理事長 医学博士 大堀 晃裕
日本大腸肛門病学会 専門医・指導医 https://www.coloproctology.gr.jp/
大学病院と総合病院に長年従事し、肛門病疾患を中心に大腸肛門病に対して多数の検査実績、手術への豊富な執刀経験を持ちます。
日本大腸肛門病学会の中でも数少ない専門医・指導医として、治療だけでなく技術指導を行なっています。
現在医療法人社団晃輝会の理事長として大腸肛門病・消化器内科の専門クリニックを2院展開し、胃・大腸内視鏡検査を年間2,700件以上、手術も年間500件あまり手掛けています。
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